目次
転倒とその予防について
高齢者に多い転倒についてまとめました。
1.転倒しやすい場所や原因について
自宅で転倒した場所➡庭が最も多く、居間・茶の間・リビング、玄関・ホール・ポーチ、階段、寝室の順に多い。
→ここまでが全体の10%以上
しかし自宅を大きく室内と庭に分けると、室内での転倒のほうが多いです。
→とくに年代が上がるにつれ、室内での転倒の比率が高くなります。
60歳以上を対象とした国の調査では、自宅内で転倒した人は1年間に9.5%、屋外で転倒する人は9.1でほぼ同水準です。
屋外で転んだ人は歩道上が最も多く、建物の敷地内、屋外の階段、歩道と車道の区分のない道路、公園・広場などが続きます。
参考:内閣府:平成22年度高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果より
転倒する原因としては、住宅の構造などの外的な要因と、本人の年齢や運動機能、疾病、内服薬、転倒した経験などの内的な要因があります。
内的な要因としては筋力の低下を中心とした身体的な要因が大きいのですが、それ以外にも認知障害などの精神的機能も関連しています。
外的な要因としては、滑りやすい床(濡れた床は危険です!!滑り止めマット等の使用も!)、物が散らかっている(動きやすいように日頃から動く場所には荷物を置かない。→廊下や階段等)、暗い廊下や階段(明るくする)、段差(玄関の上がり框に台を置いたり、少しの段差に段差解消用のミニスロープ設置等。)手すりの不備などがあげられます。それに加え、はしごや踏み台の使用、階段、ベッドの使用など、個人の運動能力に適した生活様式であるかどうかも考える必要があります。屋外の環境の整備はむずかしいですが室内は可能です。
これらの内的・外的転倒リスクが重なると、さらに転倒の危険性は増加します。海外では、転倒リスクが4つ以上重なると、1つの場合の3倍から7倍にリスクが増えるという報告があります。
また転倒により骨折し(転倒した方の約5%が骨折するそうです。)、寝たきり等になる可能性も高くなります。
【参考文献】
内閣府「平成27年版高齢社会白書(全体版)」高齢者の健康・福祉http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2015/html/zenbun/s1_2_3.html
内閣府「平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(全体版)http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h22/sougou/zentai/pdf/2-3.pdf
2.転倒予防体操
体操を始める前の注意事項(重要)
体操をはじめる前に
関節の動く範囲や筋力は1人、1人違います。イラストと同じ体勢にならなくてもいいです。身体の部位が伸びているか、力が入っているかを感じながら行いましょう。また痛みがあるときはやめてください。(少し痛いくらいがちょうどいいです。)
特に、以下の点に気をつけて行いましょう。
1.伸びる時、力を出す時は息を吐きましょう。
2.痛みが出るまで伸ばしたり、力を入れたりしないようにしましょう。
3.反動をつけず、ゆっくり行いましょう。
回数や頻度など
①ストレッチ
お風呂上がりなど身体の温まったときに行うのが効果的あり、体が柔らかくなりやすいです。ウォーキングや筋カトレーニングの前後に行うとケガの防いだり、疲労の回復につながります。毎日やっても大丈夫です。
②筋カトレーニング
一つの動きを反復して行います。最初は2~3回でも大丈夫です。慣れてきたら10回を目安に行います。力がついてきたら、10回を1セットとしてセット数を増やしてみてくだい。頻度は、1週間に2~ 3回を目安に行いましょう。
全部をゆっくりと行ってください。もしくは気になる箇所を部分的に試してもかまいません 。
ストレッチは各20秒ずつがいいかと思います。
立位のストレッチ
1.上半身のストレッチ
① 足を肩幅に開き、両手を胸の前で組みます。
② 手の甲を天井に近づけるように上げながら伸びます。
体側のストレッチ
① 1の姿勢から上体を右側に倒していきます。顔や胸は前に向けたまま伸ばします。
② 体を戻して一度手を下ろします。反対側も同じように行います。
3.背中と胸のストレッチ
① 足は肩幅に開き、両膝を少し緩めます。
② 両手を胸の前で組み、手の甲を前方に出していきます。頭は腕の間に沈め背中を十分丸めます。
③ 手を離して体を起こします。次に両手を背中側で組んで、斜め下にひき、顔は斜め上を見て、胸を天井に向けてしっかり開きます。
4.ふくらはぎのストレッチ
① 両足を揃えて立ち、片足を大きく1歩後ろにひきます。両足のつま先と踵は平行になるように気をつけます。
② 両足は前足の太ももに添えて前足に体重をかけます。後足の膝は伸ばして踵を床につけます。
頭から踵までを真っ直ぐにして伸ばします。
③ 後ろ足を一度戻して、反対の足も同じように行います。
5.ふともも(前面)のストレッチ
① 右手で壁などを支え、横向きに立ちます。
② 左手は左足首を持ち、踵をお尻につけるようにします。左膝を後方にひくように仲ばします。
③ 足を一度戻して、反対の足も同じように行います。
椅子でのストレッチ
1.首のストレッチ
① 頭を右側に倒し、右手を左耳のあたりに添えます。
② 左手は楽に下げておきます。右手の重みを使い、頭を十分右側に倒して伸ばします。
③ 一度頭をまっすぐもどし、反対側も同じように行います。
2.体側のストレッチ
① 右手は椅子の縁を持ち、左手は天井に向けて上げます。
② 左手を右側に倒しながら伸びます。左側のお尻が浮かないように気を付けます。
③ 体を戻して一度手を下ろし、反対側も同じように行います。
3.脚(後面)のストレッチ
① 右足の膝を伸ばし、踵を床につけてつま先を天井に向けます。
② 両手は足の付け根部分に添え、背筋を起こします。体を前に倒しながら伸ばします。
③ 体を起こして右足を戻し、反対側も同じように行います。
※図中の―――線は、力を入れたり伸ばしたりする部分を示しています。
椅子での筋力トレーニング
1.ふともものトレーニング
① 背もたれから体を起こして腰掛けます。両手は椅子の縁を持ちます。
② 右足の膝を伸ばします。ふとももに力を入れて、そのまま5秒維持します。
③ 足をもどし、反対側も同じように行います。
2.スクワット
① 椅子から立ち上がり半歩ほど前に出ます。離れすぎないように気をつけます。
② 足は肩幅に開き、両手は前方に伸ばしてバランスをとります。
③ 深く椅子に腰掛けていきます。座り込む前に立ち上がります。
④ 胸を張り、膝はつま先から前に出ないように気をつけます。
3.ふくらはぎのトレーニング
① 椅子の背面に立ち、横を向いて右手を背もたれに添えます。
② 足は肩幅に開きます。両足の踵を高く上げ、その後ゆっくり下ろします。
③ お腹やお尻にも力を入れて、姿勢はまっすぐに保ったまま行います。
マットでのストレッチ
1.お尻のストレッチ
① ざっくりと大きくあぐらを組み、両手の甲を床につけます。
② 手を前方に進め上体を倒しながら伸ばします。
③ ゆっくり体を戻し、足を入れ替えて同じように行います。
2.脚(後面)のストレッチ
① あぐらの姿勢で外側にある脚を横に伸ばした足の方に向けます。
② 両手は伸ばした足の付け根に添えます。上体を倒しながら伸ばします。
③ ゆっくり体を戻し、反対の足も同じように行います。
3.股関節のストレッチ
① 両膝を開いて曲げ、足の裏と裏を合わせて引き寄せます。
② 両膝を軽く弾ませて力を抜きます。
③ 膝を止めて、背筋を起こし、上体を前に倒して伸ばします。
4.腰のストレッチ
① 両膝を立てて座ります。横から見ると足で三角形が作られた姿勢になります。
② 両手は後ろについて体を支え、ゆっくり両膝を右側に倒して伸ばします。
③ 膝を一度戻し、反対側も同じように行います。
5.上腕のストレッチ
① 楽な姿勢で座り、右手を前方に伸ばします。
② 右手をそのまま胸に寄せ、左手で右肘を押さえます。
③ 両手を一度下ろし、反対側も同じように行います。
1.腹筋のトレーニング
① 仰向けに寝て両膝を曲げ、足で三角形を作ります。
② 両手はふともものあたりに添え、おへそを見ながら肩甲骨が浮く程度まで上体を起こします。
③ ゆっくり体を戻します。
2.お尻のトレーニング
① 仰向けに寝て両膝を曲げ、足で三角形を作ります。両手は体の横で床につけます。
3.背筋のトレーニング
① うつぶせに寝た状態で、両手は前方に伸ばし、足は肩幅に開きます。
② 右手と左足を同時に上げます。
③ ゆっくり戻して、反対側(左手と右足)も同じように行います。
参考文献:国立長寿医療センター研究所 疫学研究部 小坂井 留美 看護ネット
3.まとめ
高齢化により、筋力低下や柔軟性低下、バランス低下が起こりやすくなります。日頃からのストレッチや筋力トレーニングが大切になると思います。
低い段差に、つまずいたりと思いもよらないことが起こります。
健康で、はつらつとした老後を迎えるために少しずつ頑張っていきましょう。